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1863年末に初めてカメラを手にしたジュリア・マーガレット・キャメロン(1815-79)は、記録媒体に過ぎなかった写真を、芸術の次元にまで引き上げようと試みた、写真史上重要な人物です。インドのカルタッタに生まれ、英国の上層中流階級で社交生活を謳歌していた彼女は、48歳にして独学で写真術を身につけ、精力的に制作活動を展開します。そして、生気あふれる人物表現や巨匠画家に倣った構図を追求するなかで辿りついたのは、意図的に焦点をぼかし、ネガに傷をつけ、手作業の痕跡をあえて残す、といった革新的な手法でした。
本展は、キャメロン生誕200周年を記念し、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館が企画した世界6カ国を回る国際巡回展であり、日本初の回顧展です。キャメロン絶頂期の極めて貴重な限定オリジナルプリント(ヴィンテージプリント)をはじめ、約150点の写真作品や書籍など関連資料を通じて、キャメロンの制作意図を鮮やかに際立たせつつ、彼女が切り拓いた新たな芸術表現の地平を展覧します。
巡回情報
三菱一号館美術館
2016年7月2日(土)~9月19日(月)
業務内容
展覧会企画協力、図録企画・編集・制作