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日本で古くから受け継がれてきた「きれい」で「立派」な造形作品の数々がある一方、決してきれいとは言えないけれど楽しく心地よい作品や、不格好で不完全だけれど心に残る作品が点在しています。それらを生み、受け入れてきたのは「へそまがり」とも言える感性です。たとえば、破格の構図と筆致で見る者に驚きをあたえる白隠や、大胆さと繊細さの合わせ技で常識に揺さぶりをかける仙厓たちの禅画。お世辞にも上手いとは言えないけれど独創的な絵を描いた徳川三代将軍・家光。墨だけで突拍子もない造形を生み出す奇想の画家・若冲。時にややこしくも面白い感性は、常識を疑い、平凡さを超える力を私たちに与えてくれます。本展は、2019年春、東京・府中市美術館で開催されて大きな反響を呼びました。初めての巡回先となる本展では北海道ゆかりの作品が加わります。きれいでも立派でもないけれども輝かしく、悩ましくも素晴らしい作品の数々からは、日本美術の新たな味わい方、楽しみ方が見えてくるはずです。

巡回情報

北海道立近代美術館 前期:2021年7月17日(土)〜8月9日(月・祝)/後期:8月11日(水)〜9月1日(水)