古くから人は自然との関わりの中で生き、様々な物を創造してきました。それらは、生活が豊かになる道具や機械、衣服や建築物などですが、美術作品もその中で生まれてきました。中でも美術作品は、動物や植物、風景や自然現象などの自然の物をおおいに参考にしながら、絵画や彫刻などを中心に様々に表現されてきました。
16世紀以降ヨーロッパでは、自然の造形物を科学的に分析し、保存や記録、収集をおこなうようになり、実物があるものは剥製や標本にしたり、図として遺すようになりました。記録として描かれた精密な図は、博物画と呼ばれ、科学性を重視して、正確な観察を行い学者の指示を受けながら作画が行われました。
一方中国や日本では、古くから花鳥図を描く伝統があり、軸や屏風に自然の造形物を取り入れて表現されていましたが、江戸時代の頃から、諸藩に生息している動植物を調査記録するために、精密な作品が描かれるようになり、幕末・明治期には西洋文化の影響を受けた正確な図が多く制作されました。
そして現代においては、それぞれの分野がより専門化・細分化しましたが、自然の造形物が人々に与える影響は大きく、科学の分野はもちろんの事、美術の分野でも、多くの作家に刺激と驚きを与えています。
本展覧会では、16世紀から現代まで、正確に記録するために制作された資料や作品を中心に展示し、保存や記録のために求められたリアリズムを美術的な視点から紹介していきます。

巡回情報

福井市美術館
2016年2月20日(土)~3月27日(日)

業務内容

企画協力、海外借用コーディネイト、グラフィックパネルのデザイン・制作、図録企画・編集・デザイン・制作、広報物デザイン

会場写真